Thursday, July 5, 2012

エンジニアは「NoSQL万歳」と言う前に「Webエンジニアのための データベース技術[実践]入門」を読むべき (献本御礼)


しょっぱなから話がずれますが、最近「[翻訳]MVCは死んだ。MOVEするときがきた - きしだのはてな」という記事が話題になっています。一方で、この記事に対しては、

MVCへの不適切な理解から導き出されたずれた認識に見えます。MVCを否定する理由にはとてもあたらないどころか、この人が学んだMVCはMVCではなく、MVCフレームワークの使い方であった事がよく解る

MOVEは望まれなかった子 - the sea of fertility

といった批判もなされています。

僕は、結果としていいものが作られるなら無知でもいいじゃない、と思うのですが、まあこのような知識不足による誤解というのは良くあることです。

実際、「RDBMSは死んだ。NoSQLの時代がきた」と主張する人に耳を傾けてみると、その人が知っているのはRDBMSではなく、MySQL(しかも古いバージョン)の使い方だった、なんてこともあります。

逆に、なにかを主張してみたら、実はそれが僕の知識不足による誤った意見だった、ということもあります。

そのような無駄を、どう省くか。

各分野の、いい教科書を読む、というのが良い解だと思います。

たとえば、以前、前職のブログで言及(「Kazuho@Cybozu Labs: REST におけるトランザクションについて (Re: Web を支える技術)」)した「Webを支える技術」は、HTTP, REST 分野での教科書的な一冊だと思います。

そして、データベース分野で今オススメするなら、これ! 「Webエンジニアのための データベース技術[実践]入門」がいいんじゃないかと思います。

MySQL の専門家である松信氏によって書かれた同書は、リレーショナルデータベースの理論から始まり、MySQLの実装に関する議論を経て、ビッグデータ時代にデータベースがどのように変化していくかまでをカバーしており、我々現場で働くウェブエンジニアにとって、とても良い教科書になっていると思います。

氏は自書を紹介するにあたり、

小手先のツールが使えようが何だろうが、基本を知らん奴はトラブルの現場では何もできやしない、ということで、データベース技術の歴史を振り返り基礎をおさえたい方におすすめです。

Open database life: 新著「Webエンジニアのための データベース技術[実践]入門」

と書かれていますが、これは上に述べたように「トラブルの現場」に限らず「発明の現場」においても同様だと思います。

このような優れた教科書を読み、知識を共有することで、我々ウェブエンジニアは、より生産的な議論と開発に関わることができるようになるはずです。

PS. あなたのオススメの教科書はありますか? よかったら教えて下さい

このエントリは @naoya_ito さんの tweet にインスパイヤされています

Saturday, February 4, 2012

Re: 縁故採用の良し悪しと岩波書店の英断


縁故採用の良し悪しと岩波書店の英断 - 雑種路線でいこう」を読んで違和感を感じたのでメモ。

傍論かもしれませんが、企業が淘汰されるから採用基準が自由でいい(あるいは公的機関において縁故採用がダメなのは企業間競争がないから)という論理はおかしいんじゃないか。

労働関連の法律があるのは、雇用者との関係で弱者の立場になりがちな労働者を保護するためじゃないか。そして、労働者の中でも弱者になるのが「世の中の仕事で特別に高い能力を発揮することが求めら」れない仕事をする労働者。

法定労働時間にしても最低賃金にしても、そういう労働者を保護するためのものでしょう。

次に、採用における慣行を公表するのがいいかどうかについて。

たとえば児童労働の禁止。小学生が親の八百屋を手伝っていても誰も文句を言わないけど、マクドナルドの店頭に「小学生雇います」ってポスターが貼ってあったら問題になるでしょう。

あるいは、男女雇用機会均等法。現実問題として、性別をみて採用不採用はあるけど、それでも建前として雇用機会の均等がなければ、ここまで女性の社会進出は進まなかったのでは?

つまり何が言いたいかというと、社会としての建前と個人の本音を使い分けることで、社会が前に進んできている面もあるということ(そして社会的影響の大きな企業ほど、建前を大切にしてきた)。

以上より、岩波書店の一件については公言した以上、労働者保護の観点からどうなの?という質問は出るべきだと思うし、そういう問題意識をぶつけた記者さんはGJだと思いました。